ラリーレイドに取り組むに当たり、ラン・スーとヤン・シュウは2つの目標を立てた。日産パラディンでラックローズに到着することと、始めたばかりの英語を上達させつつ、フランス語も少しは話せるようになること。2番目の目標は、それぞれのコ・ドライバー、ラン・スーはベルギー人のファビアン・ルルカン、ヤン・シュウはフランス人のデニス・シュルゲのためでもある。レース中盤時点で、その出来映えは上々。「数字は数えられるし、ボンジュール(こんにちは)、コマン・サ・ヴァ?(いかがですか?)といった、基本的な挨拶も少しは知っている」とは、ドスードチーム所属の通訳、ブルーノ・デルプラ。「それに、ラン・スーは、ファビアン・ルルカンに中国語を教えたりもしている。アヤシイ言葉ばかりなのが、困っちゃうけれどね(苦笑)」
従って、ナビゲーションでは、フランス語、英語、中国語が入り乱れることになる。例えば、危険個所を警告する時には、ファビアンは「ウェイ・シャン」(中国語で危険という意味)と言うが、特に注意が必要な時は「ビッグ・ウェイ・シャン」!(もちろんビッグは英語である)。同様に、穴と言う時には「トルー」とフランス語のままだが、ロードブックが大きな穴を警告している時には「ビッグ・トルー」になってしまう。
目標の本題(ダカールに到着すること)についても、2人は休息日明けもいい滑り出しを見せた。アタールのループ終了時点で、ヤン・シュウ/デニス・シュルゲ組は総合22位につけ、ラン・スー/ファビアン・ルルカン組は、なんとわずか6秒遅れ! 「2人とも、最初は少し性急すぎたので、落ち着かせたんだ」アンドレ・ドスードは話す。「しつけの厳しい中国人らしく、2人はこの教訓をしっかり身につけ、今では順調に走っている。我々のアドバイスをよく理解しているんだ」
中国では期待の若手2人として、通常のラリーに参戦していたため、ラリーレイドで速く走るためには、ドライバーは賢明でいなくてはならないことを理解するまでには、少々手こずった。ラン・スーとヤン・シュウの間には、ややライバル意識があっただけに、なおさらだ。レース序盤、後輩に引き離されたヤン・シュウは、アタックを急いて砂丘にはまった。「通常は、2人は中国ラリー選手権でのライバルなのだが、その気持ちをトーンダウンさせたんだ」とデルプラは言う。「これまでも、仲良くするようになんて言うつもりはなかったが、2人はチームメイトだし、既にうまくやっている。例えば、ズエラ−ティシットのステージでは、366号車が、フィニッシュ直前で燃料切れになってしまった。367号車が少し遅れて到着し、フィニッシュまでロープで牽引していったんだ。ヤン・シュウは、同胞の先を越すことを優先するんじゃないかとも想像していたのに、素晴らしいね」
また、2人の中国人が、チームやビバークでの生活に完璧に順応できていることも、ドスードにとっては満足だ。「2人は、我々ファミリーの中の、小さなファミリーなんだ」ドスードは、2人のことを気遣うと共に、2人のチームマネージャーのことも気に掛ける。「2人の生活については、できる限りあらゆることを手助けしている。毎晩、2人のマシンの間にキャンプを設営して、車載している素材を使って中国料理を準備する。彼が何を気付いていなかったかって、ラン・スーとヤン・シュウが軽食を食べに来た時には、2人はすでにビバークで食事にありついていたんだ! セント・ローに滞在している間に、2人がオイスターやいろいろな貝を食べていたことを見ておくべきだったね!」デルプラは、冗談めかして語る。
メディアからの反響という面では、この計画はすでに大成功を見せている。「もう、すごいのなんの!」アンドレ・ドスードは叫ぶ。「中国からのテレビクルーは、バルセロナからチームを追いかけてきているんだ。鄭州日産が、多大な助力を行っている。毎晩、4500万人が、20分のスポーツ番組でその日の速報を見て、4億5000万人の中国人が、最大のウェブサイトのスポーツページで情報をチェックしているんだ」日産パラディンの影響は、素晴らしい結果を見せている。「チーム・ドスードは、既に昨年、中国人のドライバーを迎えており、市場の活性が止まっている中で、日産パラディンは好調を見せ、それを打破している」と通訳は付け加える。中国が世界に向けて開放化している今、ここ数年の内にダカールのスタートラインに何人もの中国人が並ぶことも、あり得ない話ではなさそうだ。
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